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個というのは、幻想

個というのが、科学の目から見た幻想かもしれないのに。
「脳・戦争・ナショナリズム(文春新書)」の中での中野信子氏のことばである(p.92)。

ちょうど直前に「密教とマンダラ(頼富本宏)」を読んでいて、その終わり近くで、空海の思想が簡単に紹介されていた。引用する。

p.235~
空海が真言密教の中心教理を表明し、(略)そのダイジェスト版といわれる「秘蔵ホウヤク」に説かれる十住心の体系で(略)、第七の段階(覚心不生心)は、不生不滅の縁起を旗印とする中観派の空の哲学をとくもので、心のみ残っていたそれすらも、高次の立場からは、無自性で空であるとする。(略)第九の段階(極無自性心)は、(略)あたかも万華鏡の世界のように、いっさいの存在は相互に幾重にも妨げなく(重々無礙)融合しあっている。

熱帯の魑魅魍魎の世界、日本国東京の集まる人々の雑踏の中、私という存在は、単なるいっぴきの虫けらにすぎない。虫けらには、その周りにまとわりついた重層的なその存在をたらしめるたの虫けらや無機物によって、そしてその捕食者によっても、虫けらとしてまさにそこに存る。

新幹線で移動している私は、さまざまな価値観を背負った数百人の人間と区別する方法に乏しく、その新幹線は、それを2分15秒間隔で運行させる数多の従業員の努力の結果として、寸分たがわぬ宇宙的な時間の正確さで、私(のような他人と区別がつかないイチ日本人)を家族のいる関西から、職場の東京まで2つの分断された世界観の橋渡しをするのである。

むじょうじんじんみみょうほう
ひゃくせんまんごうなんそうぐう
がこんけんもんとくじゅうじ
がんげにょらいしんじつぎ

私を生かしてくれている周りの存在すべてに感謝をいたします。




by khosok | 2016-06-12 23:13 | Trackback | Comments(0)

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